2016年2月5日金曜日

賢者の遺産10 ~病院編5~

まあある意味やりたいことやって締めるって人生は良かったのかもと思うが
最後に近い爺さんとのやり取りを残させてもらう。
これがうちの爺さんだけじゃあない痴呆の人の心理の1つだと

検査入院した際のお見舞いで

親父「親父わかるか?調子はどうだ?」
爺さん「ああ…お前は…」
親父「わかるだろ?俺だよ」
爺さん「ああ息子だよな」
親父「名前は?」
爺さん「……(親父の下の名前)だ」
親父「そう、そっちは?」(俺に目を向けながら)
爺さん「ああ…」
親父「俺の息子、名前!?」
爺さん「…………おうコレット(ここ本名読んでくれてますよ)だ…そうだ」
親父「うん!食べてるか?」
爺さん「……(首を振る)」
親父「検査したんだぞ、とにかく食べない駄目になるぞ」
爺さん「家はどうしたんだ?」
親父「家?普通にあるよ」
爺さん「帰るのか」
親父「俺たちは帰れるが、親父はごはん食べないと帰れないよ?」
爺さん「んー?」
親父「食事しないから今検査してるの!食事しないとうち帰ってもまた迷惑かけるでしょ?」
爺さん「あー……でも、食いたくない……」

と食事の会話がメイン、結構省いてるが質疑応答もままならずこんなにスムーズに話もできてない。
流れの抜粋、実際は「えっ?」と何度も聞き返している。マイクでも起動しておこうと思ったが
あいぽんの機内モードとはいえ病院だし、もともと語るつもりなかったから
ブログについては軽く報告するつもりだけだった。
そんなやり取りをする中、爺さんの会話量が増え。

爺さん「あのな…考えたいんだ、考えているんだ、だけど何を考えればいいのか?
    考えているんだ…」

絞り出した言葉がこれ、これが認知の極地だろう、誰だってボケたくないし迷惑もかけたくない。
特に頑固な爺さんだからみっとうもない姿を見られているのが辛いと本能が反応しているのだろう。

親父「とにかくごはんを食べよう、経過がわかればまた状況が変わってくるから、ごはんを食べるんだ」

とここで帰ることに帰るときには手を出してきたので握った、死人のように硬冷たかった。

その後「帰りたい」、「ごはん食べたくない」と呟く。
もう意志がないとわかり、同時に長くないとも俺は思った。